サロン詰め

ブリが続いているので居住区で仕事.

ネット上で微妙な作業をしているので有線LANを使いたい.でも床のワックスがけのため食堂にはしばらく入れない.そこで他に有線LANが使える居住棟のサロンに入り浸る.

ここは極地研のサイトで公開されているWebカメラが設置されている部屋だが,ブリで窓に雪がついているのでおそらく真っ白にしか写っていないだろう.このカメラを内側に向ければ私が仕事をしている光景が全世界にさらされることになるのだが,さすがにそれはやめておいた.せめて窓の雪を払うことができればいいんだけれど,固定されているのでそれもできない.ただ,数時間に一回ぐらい,重みか風の勢いかなんかでバサッと雪が落ちる.この瞬間ならば外の光景はカメラに写るはず.でも,すぐにまた雪がつき始める.

今回はじめて居住棟のサロンを使ったけれど,外が吹雪いているところなんかは道内の民宿の部屋にいるみたいで,なかなか居心地が良い.

夜になって外出注意令は解除.明日は被害状況の確認と除雪だな.


Aブリ並

25m/sの強風.A級に認定されるかもしれないブリ.外出制限が出ているので一日中居住区にこもる.

午後,皆の空き時間を利用して,昭和基地Wikiの説明会.


向岩ルート完成

imageオングル海峡をはさんだほぼ対岸に,南極大陸氷床の末端から岩礫が帯状に露出している所がある.ここは向岩とよばれている.FA他の隊員によって,昭和基地からこの向岩までのルートが整備された.途中,しらせの航跡が再凍結した所を渡ったりする.海峡の中央部の海氷はまだ薄い模様.


デジタル感性

南極大学の講演準備,日本からの仕事への対応,Wikiのえさやりなど,ほとんどパソコンの前で過ごす一日.

4/3の朝日新聞の「時流 自論」で写真家の藤原新也氏が書いている「デジタル化する人間の”眼”」という記事を読んだ.Nikonがフィルムカメラからの撤退を発表したことに触れて,

最近のデジカメの成熟ぶりの一方で,昨今のフィルムの性能は,見た目が派手になるように設定されている.そういう中で,現代人の視覚のほうがすでに,まびきされた階調や飽和した彩度によって作り出された人工的な色を脳内に定着させてしまっていて,自然の色彩を記憶色として再現できなくなっており,感性のデジタル化が始まっている.昨今のデジカメの性能も,そういう人間のデジタル感覚に追いついてきた状態であるともいえる.

私なりにざっと要約すると,こういうようなことを述べている.

南極でも,カメラはすっかりデジタルになった.現像する手間がないのですぐに画像を楽しめるし人に伝えることも出来る.その一方で,基地内にあった現像設備はほとんど閉鎖状態になって使われなくなった.前の越冬時には休日となると現像室にこもって,せっせとスライド作りに励んだものだが,それも今はない.

夕食時のミーティングで,アルバム係から,第1回オングル島フォトコンテストを実施するというアナウンスがあった.将来出版するだろう隊のアルバムに載せる写真を選考する意味も含んでいるコンテストである.

南極は鮮やかな色彩に乏しい世界だが,それでも,時々はっと感動させられるような色彩が現れることもある.カメラに光景を納めたいという衝動にかられる瞬間だ.だけれど,藤原氏の言うように,デジタル化した感性では,自分のデジカメに高コントラスト・高彩度で記録された映像が,結局は最後の脳内記憶として定着してしまうんだろうな,と思う.おそらく,フォトコンテストでも,見た目に派手でインパクトがある画像が好まれることだろう.

私自身は,何台かのデジカメを使っているけれども,Pentaxのist-D*の自然な色合いの再現性が一番気に入っている.見た目には地味な画像になってしまうことが多いのだけれど,他のデジカメ画像が,どうも自分が実際に見た光景と違う色合いでしか再現してくれないほうが気にかかるのだ.

それでもやっぱり,良く撮れてるね,と思われたほうがいいに決まっているので,彩度高めの結果を出してくれるデジカメで撮った画像を人前には出したくなってしまうのもまた事実.

写真に残したい,という衝動を抑えて,今体験しているナマの自然を五感で感じ取り,じっくり楽しんでみるいとまを持つことも,南極越冬生活では必要かな,と思う.その記憶がデジタル感性で上書きされてしまわないようにすることは難しそうなのが悲しいけれど...


南極大学入学式

新学期の季節.昭和基地でも恒例の「南極大学」の入学式と第一回の講義が行われた.今日の講義内容は,

「電波で知る身の回りから宇宙まで」
「ヨットと我が人生」
「肝臓」

南極大学の学長は観測主任.開校式辞は

image「太った豚より痩せたソクラテスになれ」

The ones who survive with a measure of happiness are those who can live profoundly off their intellectual resources, as hibernating animals live off their fat.

前者は大河内東大総長が1964年の卒業式で述べた訓辞と言われているのを引用したもの(確か実際の訓辞にはこの言葉はなかったと聞いたことがある.真相については今度調べてみよう).後者は米国の探検家R.ByrdがLittle America基地から離れた小さな小屋で半年間過ごした越冬記録「ALONE」から引用したもの.

隊員の話を講義形式で聞くことができるのは,日常生活の中でも話題の種にもなるし,そのひととなりを知る上でも貴重な機会である.これからの講義も楽しみ.

札幌の所属部局のほうでも実は「国際南極大学」というのをやっている.興味のある学生さんはこちらのほうもよろしく.


月例報告

休日日課.のどかな天気.

月例報告を仕上げる.


-20度

image今越冬初のマイナス20度.日中も-16度ぐらいまでしか上がらず寒い一日.昭和基地の4月の平均最低気温は-13.2度で,これが-20度を下回るようになるのは7・8・9の三ヶ月間.まだまだこれから.今夜も冷えそう.

久しぶりに晴れたので衛星画像で海氷の様子を調べてみたら,昭和基地の西方が大きくえぐれていた.今後の後退傾向がちょっと心配.この寒さが続いて発達傾向に転じてくれればいいんだけど...

名前を募集集だった二発目のBブリの名前が「カッキー・ウィッキー」に決まった.今次隊で活用してもらっている昭和基地Wikiにちなんで機械隊員が提案したもの.他の候補もそれなりに思い入れがあったものだったんだろうけれど,これを採用していただいてずいぶんありがたく思う.

午後,職場訪問の二回目.今回は大気関係の観測をしている観測棟,オーロラ関係の観測をしている情報処理棟,そして衛星受信棟の3カ所.どれも基地の東側にある.私は衛星受信棟で説明役に回っていたので他の棟に行けずちょっと残念.今度個人的に案内してもらおう.

今夜は「うそつきバー」が開店している.どんな大ボラが飛び出す事やら...


年度末

昭和基地の年度末は越冬交代の時だろうけど,日本は今日が年度最後の日.札幌の研究室のほうの年度末の作業を遠隔ですませる.今度は年度初めの作業が待っている.

昭和基地も一応月末ではあるので,観測関係の月末処理で一日つぶれる.

今夜も冷え込みそうだ.


またブリ

今月3つめ,越冬4つめのブリ.午後から外出注意令.

午前中に全体会議.一日当直.

ずっと管理棟にいたけど,なんだか疲れた.


西オングルルート完成

imageスノーモービルで西オングル島にあるテレメ小屋までのルート工作に出かける.小雪が舞って寒いのでパッパと作業したら午前中の仕事でルートは完成してしまった.アンテナ島周辺はまだ薄いところがあるけど,西の浦に出ると80cm以上の海氷.もうそろそろ雪上車もOKかな.

今回は指向をかえて海底地形図にルートを載せてみた.海氷に覆われた海水の下には陸上以上に起伏に富んだ地形が隠されている.前回の越冬時からそうだが,こういう海底地形を調べるのも私のメインテーマの一つ.この図でははっきり見えないけれど,点々と等間隔に記載されているのが実際の測定ポイントの深さで,7次隊以降断続的に地形越冬隊員によって一点一点海氷に孔を開けて音響測深器によって深さが測られてきた.位置も正確に出さなければ意味がないので,現在のようにGPSのなかった頃は孔の位置の測量だけでも大変な作業だった.

前回の越冬で私は西オングル島西方を担当し,一冬かけて600カ所の深さを測った.その結果を出した時点で測深の仕事は中断し,これまでの成果がコンパイルされて「オングル島周辺の海底地形図」として極地研から出版されている.

一点一点測る方法にはどうしても限界がある.範囲を稼ごうと思えば点と点の間隔が広くなって細かな地形はもれてしまう.かといって細かく測ると限られた時間で測定できる範囲は狭くなってしまうのだ.この地図にあるように,陸上の等高線の屈曲具合というか細かさに比べて海底のがおおざっぱなのはそのへんに原因がある.本来なら陸上なみかそれ以上に複雑な地形が存在しているはず.

今回のプロジェクトでは,その点を克服するための新兵器を持ち込んだ.サイドスキャンソナーである.これを使えば,ソナーから連続的に発せられる音波によって,測線方向にある幅をもった範囲の海底地形を細かく調べることができる.

氷河期には南極氷床は現在の位置よりも海側に張り出していた.そのときは氷床は海底に着底して地面を削ったり堆積物を残したりしていたはず.そういう痕跡を期待して,この冬には海底堆積物を採取したり,海底地形を明らかにしたりして,南極氷床の盛衰を復元しようとたくらんでいる.


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