太陽雑音

春分・秋分の日周辺では,衛星通信に障害が出る「太陽雑音」が発生する.昨日からVLBIの受信データを日本に転送するテストを始めているが,いくつか並行して送っていたデータが,そろってきっかり同時刻に止まっていた.丁度インテルサットが太陽雑音にさらされる時間.

「太陽雑音」自体は計算によって予測できるらしいが,大量のデータを転送しっぱなしの場合,どうしても途中でとぎれてしまう.とぎれたデータは最初から送り直すか,とぎれた箇所から再開させるかしなければならない.このへんをどうするかは国内で検討してもらうことにしよう.

午後,野外観測の年間スケジュールを検討する臨時の観測部会.

風の強い一日だったが,夜になって外出注意令が出た.そのまま環境科学棟にトラップされる.今夜は泊まり.


変動?

朝一でGPSブイの回収に出かけようとしたが,風が強くなってきたので延期.研究棟にもどって,VLBI受信データの転送試験を開始する.

数日前から,昭和基地が世界に誇る超伝導重力計に大きな振幅が記録されていた.定着氷の大きな変化でもあったんじゃないか,と国内から指示をもらい,私が担当してるNOAAの受信画像で調べてみた.2月は雲が多くて海氷がクリアに見える画像は少ないが,比較的変化のわかりやすい2/20と3/4のパスをつないだのがこの画像.

昭和基地のあるリュツォ・ホルム湾にはあまり大きな変化はなさそうだが,東のプリンス・オラフ海岸沖の変化が激しい.大きな定着氷らしきものが崩壊してちりじりになっているようにも見える.果たしてこれが超伝導重力計に現れた変化に対応する物なのかどうかは不明.

これから海氷上で仕事をすることも増える.こんなに劇的に定着氷が流れ去るようなことがこの周辺でも起こってしまうと大変なことになる.こまめに衛星画像をチェックして海氷の変化を把握しておくようにしよう.


路地

image4人で海氷上ルート工作第一弾を実施.昭和基地から東西南北へと出かけていくための出発ルートを整備した.たとえて言えば,街中の路地からアウトバーンへつながるラウンチロードを敷いたという感じ.図の緑が実際に私が動いた線で,赤がルートとして決定した線.

image海氷の厚さはまだらで,雪上車で行くには薄すぎる.今回はスノーモービルを使ったが,それでも気持ち悪い場所が多い.遠くまで見渡すために徒歩でネスオイヤに登ったら,太陽パネルの向こうに,真っ白に雪化粧している長頭山のめずらしい姿が見えた.南極にはめったにないシンシンとした雪が降ったのであろう.


岩島

image週明けから開始するルート工作に先立ち,朝一で隊長指揮のもと四人で岩島まで氷状偵察にでかける.休日日課ということで油断して寝過ごしたので,朝飯を食べる暇なく出発.

孔を開けて海氷厚を測定しながらの行程.夏に融けた箇所はまだ20数センチの厚さしかない.

imageいつも基地から眺めている岩島だが,実物は意外に大きい.久しぶりに海氷側から昭和基地を眺めた.帰りに氷山でおみやげの氷を採取する.休日日課の11時のブランチになんとか間に合うように帰着できた.これぞ「朝飯前の仕事」ってか?

午後,喫茶店がオープン.昨夜のうちに係員総出で仕込んでいた手作りシュークリームをごちそうになる.中身は昨日開放された予備食の桃カンの果入りクリーム.これを食べながら,まだ環境科学棟に非常食を運んでいなかったことに気づいて,少しずつ運び始める.

久しぶりに札幌に電話したら,「弟の名前がかっこいいのはズルイ」と長男がすねていた.なんとか彼を説得しなければ...


帰郷?

倉庫に3-5年間眠っていて今次隊から使用可能となった予備食料が,今度は非常食として各研究棟や施設に配備されることになった.これから一年間,非常時のために分散して保管される.それ以上はさすがに使う気にはなれない年代物ばかり.午前中にその仕分けを行う.

数日前に痛めた腕がまだ治っていないので,片腕でゆるゆると作業することになったが,他のみなさんがよく働いてくれるので,ちょっと気が引けながらも楽をさせてもらう.

午後,これから本格化するルート工作に備えて,主要メンバーによりスノーモービルの始動と片付けの手順について確認.

昨夜上映された「南極物語」の余韻がまだ残っている.タロ・ジロとの再会シーンはいつ見ても泣ける.ボツンヌーテンも高倉健扮する菊池さんも,そして昭和基地も,私にとっては因縁深いものばかりだし...

ということで,なにかしみじみした映画をじっくり見たいとふと思い立って,夕食後に日本から持ってきたDVDを鑑賞する.題名は「バウンティフルへの旅」.都会で息子夫婦と暮らす老女が,20年ぶりに故郷をめざす,という淡々とした映画なんだけど,なんだかじーんと来るものがあった.

「南極物語」も,ある意味では再訪物語であり,アルプスの少女ハイジがフランクフルトからアルムのおじいさんの小屋へ帰っていくシーンも私のお気に入りの場面だし,どうも,私はこういうのに弱いらしい.

今回再訪している昭和基地で「バウンティフルへの旅」を観て,主人公の老女が「絶対に行くわ.心の底で感じるの.強い力が命じている.」とレベッカ・デモーネイ扮する若い女性に語りかけるシーンが一番印象に残った.

国内でのゴタゴタを振り切ってここまで来たことにちょっと悲哀や葛藤を感じるときもあるけれど,とりあえずこの地にいることに残りの人生をかけてみようか,と思い直す力をもらったような気がする.当初はそんなことは期待もしないで日本から持ってきたDVDだったけど,思わぬところで役に立った感じ.

映画っていうのはその人の観るときの条件次第でいろんなふうにこころに訴えかけてくるものだなぁ,とつくづく思った.


雛祭

image昭和基地の食堂にも雛壇が飾られた.娘さんのいる隊員もいるけど,現物での対象者は我が隊では若干一名.

雛壇左が,例の復活させた窓.夜間はオーロラ観測のための灯火管制によりカーテンを閉めている.

昨晩から外出注意令が継続して出されたままなので,管理棟内でぼちぼち仕事をする一日.


中の瀬戸

image宙空部門が西オングル島テレメ小屋で観測しているデータ回収につきあう.まだ海氷上のルートはできていないので,徒歩でテレメ小屋まで行く計画になった.

最大の難関は,基地のある東オングル島とテレメ小屋のある西オングル島とを隔てている幅30mほどの「中の瀬戸」.山岳部の大先輩に当たる1次越冬隊の中野ドクターによって確認されたもので,両島の間にあるという意味と確認者の名前を兼ね合わせた地名になっている.

image12月下旬までは結氷していたこの瀬戸も,1月にはすっかり開いて,それが現在もまだ凍っていない.瀬戸を流れる潮流が速いから凍りにくいのだと言われている.

今回のテレメ小屋行きでは,中の瀬戸が不安定に凍ってしまう前にゴムボートですっと渡っちゃえ,という方針で決行された.安全を見込んで,フィールドアシスタント隊員と野外主任の自分が参加して,特に問題もなく終了.


TV会議

image早朝,東京の小平第四小学校とテレビ会議.小学校には極地研究所の金尾さんが講演に出向いていて,その講演の一環で昭和基地とのTV会議が企画された.金尾さんと同じ地圏部門のよしみで,日本を出発する前から昭和基地からの出演を頼まれていた.これでひとつ約束を果たすことが出来てほっとしているところ.

黄頭での出演には,ちょっと気が引けるところがあったけど,昭和基地の実態を伝えるにはまあいいか,と不届きな開き直りをしてそのままカメラの前に座った.まだ昭和基地は夏の終わりの雰囲気で,ほんとに寒い南極らしさを出すのに苦労したが,我々の演出にそれなりに喜んでいただけた様子.裏方でがんばってくれた隊員のみなさんにも感謝.

読売新聞の取材もきていたようで,まだ消されていなければWebでも読むことが出来る.


リハーサル

image次男誕生に際して,越冬仲間をはじめとして国内からも多くの方々から祝福のお言葉をいただきました.Blog上で恐縮ですが,あつく御礼申し上げます.

昨夜は遅くまで比較的長時間オーロラが舞っていました.一日遅れではありますが,この南極の自然の神秘の光のもとで次男の誕生を迎えたこと,そして子供の輝かしい未来を祈って「光」と命名しました.

明日,日本の小学校とテレビ会議を行うので,そのためのリハーサルを実施.


誕生

午前中,全体会議

会議を終えてメールをチェックしたら,携帯電話のカメラで撮った赤子の写真が添付されていた.文面は無し.ハっと思って札幌に電話すると義母の「産まれたよ!」の一声.

なんと昨日のうちに急に産気づいてそのまま産まれたのだとか.入院するとかなんとかの予告もなかったので,いきなり子供の顔を見せられた感じ.

産院のかみさん曰く,「一言でいえば『ジャイアン』みたいな子」.

ということで,次男の誕生を一日遅れで昭和基地で知った父親でした.帰国する頃にはもう歩いているんだろうなぁ...私は地球の果てにいてなにもしてあげられないけれど,元気で良い子に育って欲しいと願っています.

これから冬に入り,我々のプロジェクトも本番を迎える.正直なところ常に危険と隣り合わせの観測になるので,子供のためにもよりいっそう気を引き締めて事にあたろうと思う.

午後,懸案になっていたGPSブイのデータ回収と再設置を行う.海氷の厚さは25cm.大手を振って上を歩くにはまだ薄い.

夕食後,相手を探していたドクターに誘われて,私にとっては越冬初麻雀を打つ.勝った.まあ,ビギナーズラックということで...


1 181 182 183 184 185 186 187 250