初オーロラ

日中,調子の悪いL/Sバンドアンテナの調整.大型アンテナ担当隊員に言わせりゃ,おもちゃみたいな機構のアンテナ.現物の動きをPッチで報告してもらいながら,受信棟内からコマンドを打って角度を調べる.結果を日本に報告して,調整の手順を送ってもらって,設定完了.あとは,予約の受信がうまく受かってくれるのを待つのみ.

夕食後,前から温めていた構想を実行に移す.「昭和基地Wiki」の立ち上げ.総隊長や越冬隊長の肝いりで,観測隊は,業務を市販のグループウェアで管理している(されている)んだけど,これがいまいち,かゆいところに手が届く,というまでには至っていない.だからあまり使う気にならない.よってまったく機能しない.という悪循環に陥っている.

引継やら,業務報告やら,隊の予定やら,電子的に回ってくる書類も膨大で,自分自身でも管理方法を確立しないとワヤになってしまうと危機感を感じていたところ.自分で使うつもりでWikiを作り始めたら,まるで自分の電子昭和基地を構築しているようで,けっこうのめり込んでしまった.この調子だと徹夜してしまいそう.やっぱりこういうのは,国内で妄想しながらやるより,現場で実感を伴いながら作るのが一番だな.

作業中に外に出たら,うっすらと明るい空に淡いオーロラが舞っていた.真っ暗な空のオーロラもいいけど,ややブルーがかった空と少しの光を反射している白い大陸の上に舞うオーロラもまたオツ.

そういえば,地磁気が荒れているというので,地磁気の絶対観測が延期になっていたっけ.

残念ながら,カメラを用意している暇なく薄れていってしまった.他の隊員にわけてもらおう.


動き

地学の仲間に手伝ってもらいながら,初の47次単独のVLBI観測を無事終了.

新聞記者がカメラを携えて取材に来ていたが,見せられるようなものはなにもない単調な作業.一番の役者の大型アンテナはレドームに覆われていてそのダイナミックな動きは見えないし...

昭和基地と同時観測している,というか今回の観測の主催者であるオヒギンズ基地地図)のアンテナは,ばっちりWebCameraで見ることが出来る.観測中の眠気覚ましに,定期的にのぞいて,画像を保存した.それをつなげたのがこの画像.VLBIがいかにアンテナを頻繁にあちこちに向けるかが良くわかる.

ちなみに,画像が夜からいきなり昼になってしまうのは,私がこの時間仮眠していたため.

終了後に水平を向いて止まっていたのは,まあお行儀がよいこと.まるで生き物みたいだ.


氷不足

昨日のお昼休みから,朝ドラ「ちゅらさん」の連続ビデオ上映が始まった.昨日の第1回は見逃したんだけど,毎日1話を重複させて2話分出してくれるので,今日は1-2話を連続で見ることができた.

前の越冬では「おしん」がお昼の定番で,越冬生活で涙もろくなっている隊員たちが皆ウルウルしながらみていたことを思い出した.

夕刻,気象の観測で海氷上に出るというので,そのついでにゾロゾロと大勢がついて出て行った.バーで使う氷が不足しているのだとかで,臨時のアイス・オペレーションとなったらしい.

南極に製氷器なんて予算はとても付きそうにないんで,昭和基地には当然そういうものは存在しない.かといって,海に囲まれたオングル島では,きれいな氷は危険いっぱいの氷山からしか得られない.だから,氷取りは,隊長自らが指揮しなきゃいけないような結構大がかりなオペレーションになったりするんである.

私のほうは,みんなが氷上に出かけたころから今月最後のVLBI観測に突入.

深夜になって雪.結構積もった.もうミニドリフトもできている.


BASIC

昭和基地の内臓は新旧折り重なって稼働している.担当の衛星・電波星受信設備もその例に漏れない.最新のワークステーションがあるかと思えば,PC9801VXなんて年代物がいまだに使われていたりする.おかげで,もう捨ててもいいと思うような機材が予備として大事に保管されていたりもする.

明日からのVLBI観測のテスト中にプログラムの一つがうまく動かなくなった.前任者が帰ってしまった直後で非常にあせる.ケーブルや信号をチェックしたり,パソコンをいじくってみたり...あまり変な変更を加えると元にもどらなくなる可能性もあるので,うかつに手を出せないのが昭和基地.

幸いというかなんといか,PC98のOSは学生時代に慣れ親しんだMS-DosとN-88-Basicとの組み合わせ.昔を思い出してBASICのソースを解読して,プログラムにトラップを仕掛けて落ちる箇所を特定する.

原因は,設定ファイルの転送を,面倒なフロッピー(しかも1.2MBフォーマット!)経由からネットを使ったFTP経由に変えたことにあった.FDなんていまや使わない代物なんだけど,昭和基地の内臓部ではまだ現役なんだよねぇ...おかげでそのストックもたんまりある.捨てちゃいけない.

というわけで,思わぬところで年の功が幸いした一日.結局は最新の方法で楽をしようとしたのが原因だったんだけど,分かってしまえばあとは簡単なこと.

それにしても,MS-DOSなんて聞いたことのない世代が担当になったらどうなるんだろう?色気を出さずに忠実に手順書に従うしかないか...こんなマニュアル人間が重宝がられるような状態では,いつまでたっても昭和基地は進歩しない.極地の醍醐味は,創意工夫で新たな展開を生むところにあるというのに...


男の涙

image一旦しらせに戻っていた夏隊全員が,最終引継・清掃の名目で昭和入り.短時間の滞在の後,ヘリの最終便でしらせへと帰って行った.

これまで同じ隊として力を合わせてきた夏隊と越冬隊が最後の別れを告げる瞬間.ヘリポートで繰り広げられる光景は,南極観測隊の活動のなかでも最も感動的な男のドラマである.最近は女性隊員もめずらしくないけど,やっぱり私は,この瞬間にみせる男の涙は最高だと思う.

夏隊と前次隊を全員収容した「しらせ」は,岩島沖で反転して,オングル島の北東端にある見晴らし岩のそばを通り,日本へと帰路についた.

これで,南の孤島に残されたのは我々47次越冬隊36名のみとなった.いよいよ本当の越冬生活が始まる.


ドーム隊帰還

昨日の「帰還」は向こうへ行ってしまう帰還だったけど,今日のはこちらにやってくる帰還.

ということで,ドーム夏隊は空路早々と日本に到着したようだが,こちら昭和基地には,陸路えっちらほっちらと氷サンプルを抱えて雪上車の旅を続けてきたドーム隊越冬組が帰ってきた.そのほとんどが46次越冬隊員だが,中にただ一人,我々47次越冬隊員がいる.彼は11月はじめに飛行機でドーム入りして以来の南極滞在であり,越冬隊の中でも最も長く南極に滞在することになる.厳密に言えば彼にとっては「帰還」ではないが...これから私と環境科学棟で同居する予定.

昭和基地にたどりついた感想を聞いたら,「本当ははこれからなんだけど,もう越冬を終えた気分」と言っていた.

厳寒のドームに比べたら,夏も終わりとはいえここ昭和は南国も同然.そりゃ,越冬をおえた気分にもなるわな.


前任者帰還

越冬交代後も昭和に残って受信の支援をしてくれた前次隊の二人が昭和基地を離れるので,朝一でヘリポートで見送る.どうもお世話になりました.

入れ替わりにS17のサムライ4人が最後の引継のため昭和基地にやってきた.野武士が現代の都会にやってきたような感じ.

休日返上でVLBI観測をしていたので,今日は個人的な休日日課とする.といっても,次の受信がすぐあるので,チマチマとその準備にかかる.面倒な手順の一つを簡単にクリアできることをつきとめて,ちょっと満足.

黄頭者増殖中.


発見・再発見

imageVLBIの仕事を終えて受信棟から外に出たら,これまで褐色の地盤がむき出しだった基地の周辺は,すっかり白い世界に変わっていた.観測で活躍してくれた大型アンテナを覆っているレドームも,めずらしく雪化粧していた.普通の場合,昭和基地の雪は強風に飛ばされて横向きに降るので,これだけしっとりとレドームが雪をかぶるのも珍しい.

VLBI観測の最後の仕事は,受信の障害になるため一時停止させていた地学棟のドリスビーコンを再起動させること.そのついでに,海氷GPS観測で使う機材の確認に向かう.

11倉庫と間違われるほど荒れ果てていた地学棟もすっかり片付いてすっきりしていた.すっきりし過ぎて,必要な物品がすぐに見つけられず,一瞬あせる.

imageきれいに片付いたサロンの机の上に雑記帳があったのでめくってみた.まだ20ページほどしか書き込まれていない.一体いつから使っているのかと思って最初のほうをみたら,なんと32次から使われているものであった.15年で20ページ.年間1ページのペースということになる.

よくよく読んでみると,前に越冬したときに私が自分で10ページほどを埋めていた.まったく今書いているこのBlogと変わらない調子で日々の雑感が書いてあり,何年たっても変わらないなあ...と変な感慨に浸る.

残りのページの記載は,越冬交代間際か,あるいは昭和基地を最後に離れる前になって一人か二人がようやく書き込んでいるものばかり.これじゃページが進むわけがない.どれも決まって「今日になって初めてこのノートを発見しました」という文言で始まる文章になっていたのには大笑い.

ということで,私も「今日になってようやくこのノートを再発見しました」で始まる【越冬前の】一文をしたためてきたところ.今回の越冬でもこのノートのページを埋めるのは私の役割になるのかなぁ...


夕食後,VLBIの24時間観測に突入.

夜間ワッチの間にふと外にでてみたら,久しぶりに晴れた空に明るい星がポチポチと輝いていた.

隣の情報処理棟の上で天体望遠鏡をのぞいている隊員もいる.彼に尋ねたら,カノープス・シリウス,そして木星がみえるという.望遠鏡をのぞかせてもらったら,縞模様の木星とガリレオ衛星がゆらぎなくくっきり見えた.

太陽が沈むようになったとはいえ,越冬交代した頃までは真夜中でもそれなりに明るかった.今や星が見えるまで暗くなる季節となった.そろそろ南極の夏も終わりである.


モリタカ

image引き続き明日から開始するVLBI観測の準備.それと,大型アンテナ担当隊員にお願いして,ずっと懸案になっていたL/Sバンド受信アンテナのケーブル補修を行う.夕食後に,補修しても受信がうまくいっていないパスがあるのを発見.明朝まで様子を見ることにする.

仕事帰りに,今夜で今次越冬隊正式オープンとあいなった「くるくるバー」に寄ったら,「森高」のレーザーディスクで盛り上がっていた.前の越冬時にオープンした管理棟初代バー「藹々」の一番人気が森高だったことを思い出して,思わず若き日の郷愁に浸る.

「森高で郷愁」というのもオジサンになった証拠.当時は「ワタシがオバサンになったら...」というフレーズに現実味を感じなかったけど,もう,そういう年になってしまったんだよねぇ...

留守にしている日本の研究室から,修論発表会・D論発表会が無事終了したとの連絡がはいる.

研究室の皆さんお疲れ様でした.特に,MもDも修了される皆さん,最後まで面倒をみることができず申し訳なく思っています.とにかく,みなさんそろって学位取得できそうなことに,南の果てからお喜び申し上げます.


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