南極
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アイスオペ
風が強いが快晴.帰国後におみやげやイベントに使う公用氷を採取するオペレーションを実施.手空き総員で一日かけて中ダン・小ダン合わせて300箱ほどを採取.
L/Sバンド衛星の今日一日の受信状況を確認したところ,なんと,ほぼパーフェクトを記録!!これまでの受信ライン数の倍も取得できているパスもある.
このところ不調が極みに達していたため,根本的解決を期して,昨夜に徹底的なアンテナ調整を実施していた.どうやら今回いじくった箇所がビンゴだったようで,劇的に改善された.前次隊のときからあまりにも頻繁に不調が発現していたので,今度の夏オペではアンテナの交換が予定されているのだけれど,その必要もないんじゃないかと思うほど絶好調.
きれいな受信画像が得られるというのは,なんとも気持ちがよい.これから海氷が不安定になっていく季節,我々の海氷行動はもちろん,しらせの進入航路を決める参考資料や,航空オペレーションのための気象情報としても,昭和基地で受信している衛星画像の重要性は増していくことになる.
このアンテナ君,これまでさんざん世話を焼かされてきた問題児だったけれど,元気になった以上は,リリーフが来るまでとことんがんばってもらうつもり.
皇帝ペンギンがやってきた
朝から風が強く,予定されていたアイスオペは延期.日中,冬開け初のプラスの気温を記録.そのせいかどうか定かではないが,不調のL/Sバンド衛星受信がさらに不調.アンテナコントローラーの再調整を試みる.
VLBI観測の後始末をしていたところに,すかさず次の観測スケジュールが届く.今月は全部で3回ある.
夕刻,昭和基地に皇帝ペンギンがやってきた.9/13に足跡を確認したっきり現れる気配がなかったので,もう今次はだめだろうとあきらめかけていたとことろの訪問.全館放送で集まったほぼ全隊員により,19広場まで手厚くご案内.記念撮影大会となる.
皇帝ペンギンは決まって2羽でやってくるのが不思議.
VLBI一回目
日中に設定チェックとキャリブレーションを済ませて,夕食後からVLBIの本観測に突入.
VLBI準備
朝からVLBIの準備.6月に実施するはずだった受信がキャンセルになったため,前回の受信は越冬交代直後まで昔にさかのぼる.そうとう久しぶりの観測となるので,手抜かりのないように手順書とにらめっこで準備を進める.
なかなか肝心のスケージュールファイルが送られてこないのでやきもきしていたが,今朝になってようやく,観測キャンペーン主催者が発表してる元ファイルだけはなんとか送られてきた.実際には,このファイルを編集して昭和基地用に整えたり,昭和基地の11mアンテナをスケジュールに従って制御する二次ファイルを作ったりしなければならない.いつもは,編集と二次ファイルの作成は国内でやってもらって,それを受け取っていたのだが,国内の担当者と連絡が付かず,今日中には入手できそうにないことがわかった.そういう訳で,今回は,編集も二次ファイルの作成も自前でやらなければならないハメになってしまったのである.本番前にテストとキャリブレーションを実施しておく必要があるので,時間的猶予はない.
一刻を争う事態に対処するため,引退したPCを引っ張り出したり,MacとUnixとMS-Dosまで総動員して,あれこれと試行錯誤を半日近く繰り返す.夕刻になってなんとかファイルの作成に成功した.ほとほと疲れた.今日も日帰りで海底掘削にでかけているメンバーには悪いが,野外で穴掘りしているほうがよっぽど気が楽だ.この時点で疲れ果ててしまったので,明日からの24時間観測を乗り切るだけの体力と気力を残しておけるかどうか心配になってきた.
今しがた,VLBI観測キャンペーンで同時観測するO’Higgins基地のWebカメラを見たら,アンテナが天頂を向いていた.観測前のキャリブレーションに入っているものと思われる.実際,昭和基地のレドームの中の11mアンテナも,この状態でキャリブレーションに入っている.
改善
快晴.朝方はカタバが強かったが日中は無風の小春日和となる.
三浦組の二人はサポートを募って日帰りでラングへ穴掘りに出かけた.私はVLBIの準備のため基地に居残り.VLBIの準備と並行して,海氷GPSの設置やL/Sバンド衛星用アンテナの調整なども実施.
本日,ドーム航空隊が日本を出発した.我らのドーム旅行隊も順調に距離を伸ばしてランデブーポイントのARP2も間近である.夜の定時交信は電波の状況が良かったので長話しができた.みな元気そう.
もう次の夏が動き始めたんだねぇ.昭和は昭和で,次隊歓迎委員会が今日発足した.
ほぼ一年前に,13年ぶりにここに来たときの最初の印象として,昭和基地の醜悪化が進行していることについて書いた.これまでの越冬生活を通じて,少しでもそれを改善できるように心がけてきたし,実際にいくつか行動に移したこともある.一緒に越冬生活をするうちに,実は隊長も同じ事を考えているらしいということも感じてきた.今日は,その隊長による実践が形になって現れたものを見ることができた.おもわず嬉しくなったので,ここに書いておこうと思う.
管理棟の中央部にある階段ホールには,新聞やお知らせを張り出す掲示板が設置されている(み・くりさんのサイトに詳しい写真がある).実は,これまで使ってきたものは,前にも書いたように,場当たり的で何の合理性も美学も感じられない見苦しいものの一つで,非常に気になっていたものの代表であった.それが,隊長の日曜大工によって,すっきりとしたものに作り替えられたのである.なんでもっとはやくこうしようと言い出さなかったのか,自分でも不思議だが,喉につかえていたものがようやく取れたような感じで,非常に気持ちがよい.
次の夏には外国人やお客さんも来るみたいだし,これからどんどん昭和基地は来訪者に開放されていくことになるだろう.そのときに恥ずかしくないようにしておくような気遣いも必要になってくるのではないだろうか.お客さんにとって気持ちがよいものは,実際に生活している我々の精神衛生にとってもよいものに違いないのだ.
越冬隊だけの昭和基地生活も残りわずかになったけれど,到着当時の初心を思い返して,心残りのないように,そしてこの気持ちを次の隊にも伝えられるように,できることを実践していこうと思う.
母校と交流
悪天の予想ははずれて比較的良い天気.気温もぐんぐん上がって,マイナス一桁台になる.一応近くに低気圧があるので,湿気があるのか,なんだか蒸し暑い感じすらする.
早朝,テレビ会議システムを使って,25年前に卒業した母校の中学校の文化祭会場と交流.
多くの隊員に手伝ってもらって,管理棟の中を移動カメラで説明したり,生徒からの質問に応えたりする.
むこうからは,楽器の演奏や,生徒さんたちが独自に取り組んできた課題の発表などを聞かせてもらった.別れぎわに,校歌の合唱にのせて送られてきた激励のスチル映像は,青春の一ページを切り抜いて送ってもらったような感じがして,感動的であった.
午後,ケーブルの補修箇所のチェック.L/Sバンドアンテナの調整など.明日からラングホブデ沖の探査に再挑戦.しばらく不在になる予定.
ドーム隊出発
今日は思いがけず予定外に基地にいることになったので,ドーム隊の出発を見送ることが出来た.ドーム隊は,とっつき岬経由でS16へSM50で行って,そこでSM100に荷物を積み替え,さらに燃料ドラムそりを連結して本格的な出発となる.そのため,S16までドーム隊を送り届けるドライバーが必要で,今日は本隊の他に隊長ほか3名もS16まで行ってしまった.沿岸にも旅行隊が出ているので,基地に残っているのはわずかに13人.
ラングホブデ沖で海底探査をしている三浦組は,今日も不具合がでて,修理キットをとりにリーダーが一時帰投.またとんぼ返りで戻っていった.満身創痍とはこのこと.基地でお休みしているのが申し訳ない.
テレビ会議の発表資料作りや,ドームへ出かけてしまったFAが,置きみやげに作っていってくれたペンギンセンサスルートの方位表をまとめたりして一日を過ごす.
穴
壊れた機材を修理するため,朝の早いうちに作業を終えてリーダーだけ昭和基地に帰還.といっても一人で帰す訳にはいかないので,ちょうどラングホブデ方面にペンギン調査用のルート工作に出ていたパーティにピックアップしてもらうことにした.待ち合わせ場所は,ルッカリーのある袋浦.
ここには,しらせがオーストラリアのネラダン号を救助したときに,そのお礼にもらったというアップル・ハットがある.タスマニア製.しばらくオングル島にあったが,数年前にここに移設された.
このすぐそばにルッカリーがある.もう20羽ほどがいた.夏オペの後半に見た子育て末期のペンギンは薄汚れているし痩せている感じもして,貧相だった.それに比べて,海からルッカリーに戻ってきたばかりのペンギンたちは,まるまる太っているし羽もつやつや輝いていて,とても美しい.きっと海にいた時期は楽園生活だったのだろう.ペンギンにとって夏の子育ては,我々観測隊同様に,実は相当の重労働なんじゃないか,なんて思ってしまった.
お昼ごろに小屋に戻って,今度は,前からずっと気になっていた「穴」の偵察にでかける.「穴」とは,小屋から上流に伸びる「やつで沢」という谷の源流部の氷壁に開いた穴である.南方ルート上からもよく見えるので,ラングホブデ沖を通過する度に是非とも検分しておきたいと思っていたもの.
この穴は,やつで沢をせき止めるダムのように張り出している氷河の壁の真ん中に開いている.その上流側にはこの氷のダムでせき止められてできた池があって,大陸から流れ出す氷河の融け水の受け皿になっている.
氷壁の真ん中に穴が開いているので入るのは無理だと思っていたけれど,直下まで行ってみたら,ちょうど人が通ることができるくらいの切れ込みが入っていた.たぶん,水が流れ出して下刻した跡だろう.
そこを伝って中に入ってみると,入り口の穴の大きさからは想像できなかった巨大な空洞になっていた.側壁は垂直な基盤岩で,その上を氷河氷が覆っている,典型的なSubglacial Spillway(氷河底洪水吐)である.
奥のほうには崩れた氷のブロックが積み重なっていて,せき止めている湖へ通じているかどうかは分からない.今の時期はマイナス15度〜20度くらいまで冷えているのでそれほど危険は感じないが,あまり永居する気にはなれない場所だ.融解期にはせき止めている湖からの逸流や,最悪の場合,鉄砲水が出る危険もあるだろう.
いずれにしても,氷河地形屋として非常に興味深い代物.だいぶ前ににやつで沢の地形形成過程について論文を書いた事があるのだが,その解釈が正しかったことも証明してくれる穴である.
夏はすぐそこ
風が強いので今日の出発はなし.明日に延期.原稿書きなどで一日を過ごす.
夕食後にサロンのソファに寝転がって窓の外を眺めていたら,大きな翼を広げた鳥が目の前を通過した.トウガモが戻ってきたに違いない.夏はもうすぐそこだ.
夕食後に鳥の姿を確認できるほど,もう昭和基地の日の入りは遅くなっている.オーロラを見るチャンスも少なくなる.そんな中,インターネットで生のオーロラを配信するLive!オーロラという企画があるのを知った.11月1日から放送開始ということ.北半球ではこれからがオーロラのシーズン.
協力者には48次隊長の宮岡さんも入っているし,プロジェクトの説明のページの地図には昭和基地の位置にマークがしてある.さらに,静止画のプロジェクトとして昭和基地の電離層部門を出しているNICTが担当している.Voiceの欄には南極展のことも書いてあった.
もしかしたら北半球の夜が明るい夏の間は昭和基地からの映像が流れるのかもしれない.そうなれば,帰国しても昭和基地の夜空を楽しめそうだ.
なんといっても,妻や息子達も一緒にオーロラが舞う空のすばらしさを体験させてあげたい,というのが夢.エドモントンでもチャンスはあったけど,かみさんが来ていたときに限って出なかったんだよねぇ...サポーターズクラブに登録しようかしら.






