南極 一覧

羨望

トラバース隊がS16に戻ったとか.氷底水流に関する有望な手がかりもつかんだらしい.私がこの手でやりたかった仕事がやられてしまったかと思うと,トラバース隊に関わっている研究者がなんともうらやましくて仕方がない.

とりあえず皆さんお元気のようでなにより.

週末の深夜討論番組で地球温暖化のことをやっていた.さすがに徹夜でみる元気はなかったので,録画したのを昨日見た.

研究者側の出演者のホープは,最近出番の多い江守正多氏.うちの研究科にいた故沼口助教授の弟子に当たる方.モデル屋の意見としては,まあまともなことを言っていた.

これで思い出したのが,随分昔に書いたこの記事で紹介した,江守氏による【「環境」という予算で活動する研究者像】の分類表(PDF参照).学院になっても状況はあまり変わっていませんな.


札幌市での出来事

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環境大臣から私に与えられた
南極地域活動行為者証

札幌市内で発生した南極記念品の盗難事件.手記や寄せ書きなどかけがえのないものもあるということだから,なんとか戻してあげてほしいと思う.ただ,ある人にこういうのはクリアしているのかな,と聞かれたので,私もちょっと疑問に思った.ニュースで一般に知れ渡っただけに,気軽におみやげを持ち帰って良い,と思われてしまうことが心配ではある.まあ,そんなに簡単に行けるところではないのだけれど...
(参考サイト:環境省:南極観光・訪問する方の手続き


氷流と氷河

南極で氷床の融解が加速というニュース.昨年できたばかりのNature Geoscience電子版の論文の記事.このジャーナルに登録していないので要旨しか見ていないのだが,私の注目点は以下.

  • 東南極はほとんど変動がない.
  • 西南極のアイスストリームを経由した氷床の海洋流出は増加している
  • 大気を経由した水蒸気の逆方向の流れ(涵養)は気候モデルで計算(要確認)
  • 日本語記事で「溶ける」と書かれているのは「融ける」とすべきか?
  • Dec 20の号には,「Response of glacier basal motion to transient water storage」という論文があって,氷河底の水の重要性が指摘されている.杉山氏の論文も引用されており,注目の論文.


    岩島カメラの威力

    image昨年末あたりから,昭和基地のWebカメラに岩島カメラが加わった.昭和基地主要部を写していたり,接岸中のしらせを写していたりで,これまでにない視点で昭和基地の様子をリアルタイムでみせてくれている.従来から基地内に設置されていたWebカメラでは,見晴らし岩沖に停泊しているしらせの全貌を見ることはできなかったが,岩島カメラは鮮明にその姿をとらえている.

    我々が昭和基地にいた時から,Webカメラ好きの48次越冬隊長が岩島カメラを企画しているらしい,とは聞いていたが,ようやく実現したんだ,と思った(実際の設置は昨年9月だった模様).

    imageこの岩島カメラの偉大さを昭和基地周辺のことをよくご存じのない方に理解していただくには,ちょっと説明が必要だろう.

    実は岩島は,昭和基地のある東オングル島の北方約2kmのところにある.この間は,常時海氷が張り詰めていて,時には開水面が現れることもある海であり,カメラ画像を送信したりカメラを制御したりする信号線をのばすことは不可能である.それでも,現実にこのように映像を送ることができるのは,昭和基地と岩島との間を無線LANでつなぐ技術が使われているからである.また,岩島は無人島だから,電源となるなんらかの仕掛けが設置されていることになる.サイトの説明には「夏季限定」と書いてあるので,おそらく電源は,ソーラーパネルか風力を使って充電できるバッテリーなのであろう.

    その技術的な進歩に加えて,遠隔操作であやつれるもう一つの視点を得たことの重要性は大きい.岩島はせいぜい2km離れた所にあるとはいえ,悪天や海氷が不安定な時期には,そうやすやすと行き来できる場所ではない.そこからの映像が,基地内(はたまた日本国内)にいながらにして見ることができるというのは,昭和基地の視点革命といってもいいくらいの進歩なのである.

    実際,我々47次隊が越冬していた時期には,海氷が流出してしまう事件が発生したが,当時は,東オングル島からの目視観測と,はるか上空のNOAA衛星画像しか使えなかった.流出後の海氷復活状況を島内から定期的にモニターしていたけれど,いちいち島のはじっこまででかけていって,見渡せる範囲で写真を撮って記録するのがせいぜいだったのである.

    「海氷監視カメラ」と名付けられていることからも分かるとおり,岩島カメラはそうした海氷の状態をリモートで安全にモニタリングするのにうってつけの装置なのである.


    だいちの観測精度がなかなか上がらないのだとか.実用性が期待されていただけに,運用者の落胆と世間の失望は大きいとは思うが,これも科学技術の進歩の礎だと思えば,この程度の失敗は許容されるべきではないかと思う.今の世の中,失敗すると予算を削られたり,計画自体がつぶされたりしがちだけれど,失敗の積み重ねの上に進歩があり,大きな成果が得られるということは忘れてはいけない.


    求む男子。至難の旅

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    一年間にわたって道新が特集してきた48次越冬隊の「南極通信」が今日で最終回を迎えた.我々が昭和基地を引き継いできた人たち,特に北海道にゆかりのある隊員からの情報を元にした記事だけに,私にとっては帰国後もずいぶん楽しませてもらった特集である.

    最終回(番外編)にあるシャクルトンの公募メッセージにまつわる話は,なかなか心憎い演出.小川ドクターが学生時代に北大でみたという山岳部の新人募集ポスターは実は私の作である.たぶんこの道新の記事は,この連載を企画された山岳部OB記者のものにちがいない.「なぜ、南極に行くのか」という問いに,真剣に向き合う人々の合作は,わたしの中では傑作の一つに位置づけられる.

    実は,執筆中の原稿中に同じネタでコラムを書こうとしていた矢先のこの記事で,先にやられた,と思ったのものまた事実.

    小川さん,戸田さん,無理なお願いを押しつけてきてしまってどうもすみませんでした.越冬交代まであと少し.安全な夏オペの完遂と無事のご帰国を祈願しております.そして昭和基地や大陸で活躍の皆さん,どうぞ良いお年をお迎えください.


    日ス合流

    JARE48-49内陸トラバース隊が,スエーデン隊と合流したらしい.

    こういう記事を読むにつけ,もう一度プロフィールに掲げている以下のことを噛みしめたくなるこの頃.

    私の研究観
    「開拓者は矢を受け,入植者は土地を手に入れる」
    現在の研究のモットー
    「...されど開拓者たれ」

    そろそろ入植者として落ち着きたい年頃かも.


    あとからやってきた南極たち

    今日は南極がらみの出来事が多い日.

    お昼過ぎまでかけて,帰国以来ずーっと懸案だった原稿の,まあファーストドラフトとでも言ったほうがよいくらいのものを仕上げた.気分的にちょっとプレッシャーから解放された.

    原稿を仕上げてぼーっとしていたら,事務から電話.着払いで小包が来ているという.支払いをかねて受け取りに行ってみると,それは,JARE34の15周年記念品として作成されたDVDであった.

    当時,ホームビデオはハンディカムHi-8の時代.越冬の一年間にわたって隊員が撮りためたテープを集めて編集し,DVD5枚のボリュームに仕上げた大作である.そのセットに,私が5年前にJARE34の10周年記念に作ったスライドショーDVDが加わって,全部で6枚が1セットとなっている.全部鑑賞するだけでもたいへんな量だ.15年前の記憶と,ついこの春までいた南極の記憶とがオーバーラップしてしまっている私としては,自分の記憶を再構築させるのに丁度よい.

    帰宅してみると,今度は極地研から分厚い封筒が届いていた.開けてみると立松和平氏の著書「南極で考えたこと」(春秋社)が同封されていた.この11月末に出版されたばかりの本を,昭和基地でお世話したJARE47越冬隊の一人一人にプレゼントしてくれたのだ.

    三浦組の話が随所に出てくるのはありがたい.昭和基地での研究者像が美しく描かれすぎているのではないかと思えるフシもないことはないが,自分のことは自分では本当にはわからないこともある.立松氏の目を通して受け止められた我々47次隊の一人一人の姿は,あながち脚色も誇張もないそのものの姿だったのかもしれないと思った.確かにあそこでは人間は良い方に変わってしまうのだろう.私などは,今の姿をこの本の読者の前にさらすことなど,とても出来そうにない.

    極地研は,今後,文化人や教育関係者,青少年などを昭和基地に連れて行くことも検討しているらしいが,立松氏はそういう,研究・観測者以外の専門人としての先鞭を切ったと評価できる.こちらが数ページの論文を創出するのにヒーヒー言っている間に,本を一冊出してしまうのは,さすが書くことを生業にしているプロの仕事だとも思う.しかし本書は,あくまでも昭和基地を訪れる機会を得た文人のエッセーである.学術的な内容が含まれてはいるけれども,それは著者の体験を修飾する周辺情報ととらえた方がよいだろうと思う.
    (【…で考えたこと】というタイトルの本は,私が知る限りどれも「エッセイ」である)

    ということで,思わぬ南極からのおっかけ品が届いた日になった.JARE34の皆さんもJARE47の皆さんも,そして立松さんらVIPの方々も,すばらしいクリスマスプレゼントをどうもありがとうございました.


    恐竜

    都合で南極の恐竜について何か書くことになった.極寒の南極と恐竜との組み合わせはいかにも一般受けしそうな事項ではある.でも,自分の研究対象年代からは大きく離れていることでもあるし,ましてや古生物のことなので,これまで特段注意を払ってこなかった.最近になって必要に迫られて調べていたら,これが意外に面白い.

    南極で恐竜の化石が産出するのは,横断山脈の海抜4000m以上の標高というすごい場所.発掘作業だけでも相当大変そうである.この春に購入した「Encyclopedia of The Antarctic」を紐解くと,南極大陸初の恐竜化石「Cryolophosaurus elliotti」の発見者でこの分野の権威でもあるWilliam R. Hammer博士の記述に至る.

    この恐竜の名前が面白い.「Cryo」でも察しがつくように,属名は寒冷圏にちなんだものであり,日本語にすると「凍り付いたとさかをもつトカゲ」という意味になる.このとさか状の頭のかざりが,エルビスプレスリーの髪型にも似ていることから「ジュラ紀のプレスリー」という愛称もあるということだ.

    実は,つい最近,このプレスリーに次ぐ二種類目の南極恐竜が発見され,その記載論文がActa Palaeontologica Polonicaの最新号に発表されたばかりであったことを知った.その名も「Glacialisaurus hammeri」.これまた「Glacial」という雪氷圏にちなんだ属名がついている.種小名のほうはもちろんHammer博士を讃えてのものだ.

    生物部門の専門家とつきあっていると,だじゃれや言葉遊びが好きな人が結構多いような気がするのだけれど,きっと,この恐竜の命名のように,自分が発見し記載した新種に命名権があることとも関係しているのではないと思ったりする.

    閑話休題...なんと,すでに英語版のWikipediaにGlacialisaurus hammeriが登録されている.これには驚いた.この素早さは,恐竜マニアが世の中にいかにたくさんいるかという証しだろう.そう思うと,私のような素人がこの話題についてそれらしいことを書いてよいのかどうか,かえって心配になってしまった.

    この他にも,つい最近,白亜紀に南極大陸とつながっていたオーストラリア東部で大型の肉食恐竜の足跡(種は不明)が発見されたりもしていて,食物連鎖の頂点に位置するティラノザウルスに近い種の存在の可能性として注目されはじめていたところだ.

    これらの恐竜が生きていた白亜紀初期の南極大陸は,現在よりもやや低緯度にあり植物も繁っていたとはいえ,氷床の発達は始まっていたし,冬期には極夜もあり,気温も氷点下まで下がっていただろうと考えられている.恐竜の恒温動物説がにわかにもっともらしくなってきたということである.

    ということで,もっと勉強して度胸を付けなきゃとても筆が進まないため,2002年発売の「ディスカバリーチャンネル 恐竜の大陸 オーストラリア・南極」というDVDを注文してしまった.また散財...


    心理テスト結果

    「環境史研究のための山岳アイスコア」という面白い研究集会があるというのに,雑用で席をはずせず,今日は参加をとりやめ.

    越冬中に実施協力した京都大学の南極心理研究の受験者フィードバックが送られてきた.出発前・越冬交代時・極夜期・極夜明け・白夜期,そして帰りのしらせの中まで,全部で6回実施されたもの.

    異なる二つの木を描かされるバームテスト結果はなかなか面白い.自分では毎回どれも全く同じ木を描いたつもりなのに,6回分をまとめて並べてみると,大きさや枝振りが微妙に違っていたりする.45次から始まったテストのようで,我々47次と,45,46次との比較があるのも面白い.それぞれの隊でもそれぞれの特徴が出るようだ.48,49次も継続されるという.

    要望があれば,直接面談して結果の分析を知らせてくれるという案内が前に来ていたのだけれど,多忙につき,面談をお願いすることはしなかった.でも,実際に結果を見て,心理学者がこれをどう解析するのかにも興味が出てきたので,その研究者の実像を見る意味でも,面談してもらえば良かったかな,と思う.


    南極全土の衛星画像

    超久しぶりに講義.途中でいなくなった教授の代打.風邪気味で声が出ず,しゃべりを少なくする工夫で対処.

    imageIPY2007-08の一環で,NASAとUSGSとBASが共同で高解像度の南極全土の衛星画像モザイクを完成させたというニュース.使っている衛星はランドサット7.プロジェクトのチーフは,アイスストリームの研究でも有名なあのBindschadler博士.

    こちらで公開されているのでさっそくダウンロードを試みたけれど,待ち行列が一向に減らず,かえって後ろに回されたり...日本からのリクエストは後回しか?

    しかたがないので,部分画像だけで昭和基地周辺を見てみた.それが左の画像.これまでのAVHRRをつかった画像よりは確かに解像度は向上している.これよりもまだ拡大できるけれど,これ以上拡大するとかえってピクセルが目立って使えず,やや中途半端.最新の画像で全土をカバーしているというのが利点ぐらいか.この画像を使って作ったというマクマード周辺の動画は圧巻.DEMが整備されているからできるんだろうなぁ.

    とはいえ,建物レベルの細かいところを見るのなら,やっぱりだいちが良い.ただカバーされている地域がほんの一部しかないけど...


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