日刊スポーツ同行記者のBlogで知ったのだが,次期観測船の就航で夏期の人員増が見込まれるため,夏期のオフィス環境を整備するための新棟建設案があるそうだ.
たしかに,現在の夏隊のオフィス環境は悪い.夏宿の合宿場みたいなところでゴロゴロとパソコン画面を覗きながら仕事をしている.しらせからの支援乗員とも同居なので,なにかと気を遣うことも多い.観測系の隊員は引継もあるのでそれぞれの部門の観測棟でオフィス仕事ができるけれども,これ以上人員が増えたり,外部の研究者が来たりした場合はかなり手狭になる.夏期のオフィススペースの確保は確かに必要.
しかし,昭和基地に人員が増えると言うことは,それだけの生活インフラへの需要も増えるわけで,造水・電力・廃棄物処理・食料など,オフィススペースにとどまらず全面的な検討が必要になる.特に,環境保全の面でいえば,これ以上昭和基地周辺で人工改変を加えたり廃棄物の排出を増やすのはどうかと思う.
そもそもキャパシティが増えるのは船であって,基地ではない.基地に持ち込むことができる物資量は増えて生活基盤を支える要素は増大するけれども,その分だけ余計に環境にインパクトを与えるということでもある.
むしろ,夏オフィスの機能は新造船にもたせたほうが良いのではないだろうか?どうせ基地でできる観測には限界がある.前にも書いたとおり,大気や電波観測はダメ,自然地理的調査もオングル島じゃたいしたことはできない.結局は,増員分は大陸や沿岸に出かけて調査する分にまわるだろう.それならば,輸送ヘリがあって生活インフラが完結した船を根拠地にしたほうがよっぽどましだ.少なくとも海洋域にいるので,環境への汚染も最低限に抑えることもできる.船と基地との輸送の手間も省ける.インターネットだって,昭和基地を経由した無線LANで可能だ.航空機でS17に来る人員も,最終的には船で受け入れるほうがよい.船の一番の弱点は真水だが,荷油送油とは逆の発想で,オングル島の水を船に送ることができるようなシステムを作ればよい.
毎年のように繰り返される夏期の土木建築工事も,そろそろ収束させてはどうかだろう.そうすれば,設営系の隊員を本来の観測支援に集中的に投入できるわけだし,研究者自身が土木作業をする必要もなくなるし,海上自衛隊乗員の支援もいらなくなる.これを機会に,公共事業的な従来のやり方をやめて,根本的に違う発想で夏オペの運営方法を検討したら良いと思う.
土木作業員に代わってあらたなスタイルの夏オペに必要と思われるのは,ホテルのマネージャーのような運営面をとりまとめる人である.人員の把握と宿泊や移動をマネージする重要性は増大するにちがいないからだ.また,研究・観測基地の意味合いを確保し機能的に運営するには,研究面のマネージメントをしたり,図書・地図・気象データなどの研究資料を整理・提供し,さらに観測の意義を解説をしたりするサイエンスインストラクターのような人も必要だろう.外国人対応には通訳も必要かもしれない.また調理・給仕・清掃に携わる人,野外活動を支援し安全を確保するフィールドのスペシャリスト,国際航空網に対応する航空オペのスペシャリストなども必要だと思われる.このような人たちのオフィススペースなら,昭和基地にあってもよいかもしれない.
単純に増員バブルにのるようなことはしないで,増員の影に環境に与えるインパクトや廃棄物処理など負の面もあることを考えたほうがよいし,観測に本当に必要なもの最善のものがなにか,ということを厳選する姿勢は必要であろうと思う.