元旦以来の休日日課.でも,締め切り日である持ち帰りリストの作成に専念すべし,というお達しが出ている日.
毛利さんは科学未来館のイベントでS17からネットテレビ会議.日本だけではなく,タイとオーストラリアも結んだ多元イベント.昭和基地は,西オングルに設置した無線LAN中継点設備を経由してS17から届くネット信号を,さらに極地研へ転送するだけの仕事だったので,実際に交信の様子を見ることができず残念.いろんな要因が重なって,たびたび回線が切れたけれど,さすが緊急時のバックアップ・プランが綿密に仕組まれていたようで,それなりにうまくいった模様.
その後,昭和に残っていた立松さんと今井さんも合流してVIPは「しらせ」へ見学に.
交信が切れた原因の一つに,昭和基地内のLANの不具合があった.単にS17からの中継経路が不安定だったことだけが原因ではない様子.
昼食後に,LAN担当隊員と一緒に原因を切り分ける作業を実施.なんとなく原因らしき場所はつかめた.この原因箇所は越冬中もずっとそのままだったものなので,夏オペ特有の負荷のために,これまで潜んでいた不具合が顕在化したのだろう,という結論.
LANの不具合の復旧を急いだ理由の一つは,明日,毛利さんが昭和基地から報道ステーションに出演する企画があり,今日の午後にその接続試験をする予定になっていたためでもある.LAN復旧の手伝いついでにテレビ朝日との接続試験にも付き合う.こちらは原因を切り分けた後だったので,ほぼパーフェクトに成功した.
夕刻,VIPがしらせ見学から戻ってきて,一昨日に延期になっていた職場訪問の続きを再開.今日こそは衛星受信棟に来ていただけるということで,ちょっと早めにスタンバイ.しかし,一つ前の情報処理棟でたっぷり時間がかかってしまったようで,夕食時刻直前にようやく衛星受信棟の訪問となった.
一行が棟内に入ってきて,VIPを出迎えた私の顔を見た立松さんが,開口一番,
「あれ?三浦組の澤柿さんですよねぇ?」...「(こう言っては失礼だとは思うんですけど)どうしてこんな最先端の(機器のたくさん詰まった)棟にいるんですかぁ?」
だって.
それを聞きながら横できょとんとしている毛利さんに立松さんは説明を始めた.
「毛利さん,三浦組ってのはですね,海の底のドロを採取しようってがんばってるプロジェクトチームのことなんですよぉ.人工衛星とは対極的な土方仕事みたいなことを冬の間ずっとやってきた人たちなんですぅ」
まあ,突然JARE47の昭和基地にやってきた人たちには,私の立場が一番複雑怪奇に見えるだろう.正式には「極域衛星受信担当隊員」として観測隊に参加しているものの,その実は三浦プロジェクトの参謀役であったりする.他にも,今日の午後にやっていたようにLANの面倒をみたり,はたまた,お外系の野外主任をやっていたりするし,いったい何者?と思われても不思議はない.
おかげで,衛星受信やVLBIのことを説明する前に,まず自分が何者かを説明するのにしばらくかかってしまった.でも,こうして衛星受信棟で説明役に立たなかったら,この複雑な立場をちゃんと理解してもらう機会もなかっただろうとも思うので,丁度よかったと思う.
実際のところ,立松さんの驚きは私にとっては嬉しい驚き.土方仕事をしている,と言われるほうがフィールド屋の私にとっては本望なのである.
VLBI・GPS・合成開口レーダーなどの測地学的な衛星の使い方から生み出される成果は,私が専門としている南極氷床変動の解明にとっても有力な材料になる.まともにVLBIの技術や衛星工学的な話をすることは,雇われオペレータの身には荷の重い話だが,そのデータから応用できる氷床変動解明への道筋については充分自分の土俵に載せられる話題だ.最初は,専門外の質問にどう答えて良いかドキドキしていたけれど,自分の土俵に相手の興味を誘い込むことで,なんとか面目をはらすことができたように思う.
まあ,毛利さんなんかは,あえて素人を悩まさないように武士の情けで突っ込みを甘くしてくれていたに違いないのだろうけれど...
棟内の説明の後,実際に大型アンテナが動く様子をみてもらったり,超伝導重力計もみてもらったりして,終了したらすっかり19時を回ってしまっていた.