Takanobu Sawagaki沢柿教伸

Takanobu Sawagaki

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flag.gif エドモントン滞在記
2002.4.16〜4.30
4月16日(火)

エドモントンの地学協会みたいなところで氷床下のトンネルチャンネルに関する講演があるというので,Shaw教授と車で出かけた.ところが,教授がチェックしてきた建物内にはそれらしき会場がなく,結局,同名の建物が他にも存在してるのかもしれない,ということであえなく退散.

昨夜,寿司をたらふく食べる夢をみて,どうしても寿司が食べたくなった.そこで,夕食がてらに,自転車通学路の探索の折に見つけて目星をつけていた“Wasabi”という日本料理店にでかける.ここは大当たり.非常においしいお寿司で大満足.いつも行くショッピングモールからも比較的近いので,もっと前から来ていればよかった.

その店内に掲示してあったポスターを発見.5月に日本舞踊の公演会が大学の劇場で開催されるとか.いい機会だから,なんとかチケットを確保してShaw教授夫妻を招待しようと思う.公演会のホームページには,さっき行ってきたばかりの“わさび”でチケットが手に入ると書いてあるけど,私が聞いた限りではチケットはまだ置いていなかったなあ...事務局にメールしてみよう.

UNEPがヒマラヤの氷河湖決壊の警告を発している.Yahooのニュースで発見.低温研の山田さんの記事内藤君の記事も紹介されている.低温研のBBSも参照.

4月17日(水)



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良い天気になったが,大量に降った雪はなかなか消えない.

明日から試験らしく,部屋の前には,クリスのところに質問に来た学生が行列をつくっていた.構造地質学の質問で,皆,地中の3次元構造を理解するのが苦手のようだ.

Shaw教授のところにChanneld Scablandの本を借りに行く.その時に,Grosswald教授が書いているというロシアの氷床融解に関わる洪水の本について聞かれる.ロシア語の本が出ていることは知っていたので,たぶんそれのことだろうと返答しておいたが,さすがのShaw教授も,マキシマリストのGrosswald先生の説には否定的.よほどその本のことが気になるらしく,4/15に書いたBaker教授にメールで聞いてみる,と言っていた.

帰宅時にちょっと遠回りしてプリンタのインクを買いに行く.日本の倍近い値段にビックリ.つでに“Fumiya”という日本食店によって,食材と日本舞踊のチケットを購入.

4月18日(木)

アフガンで起きた米国の誤爆によって死亡したカナダ兵の中にエドモントン出身者がいたらしく,この事件に関しては地元メディアの扱いが大きい.

最近復活したCNNの日本語版Webページで面白い記事を発見.“日本人観光客、侵攻作戦知らずベツレヘムの聖誕教会へ”というものだが,まずは一読を.

この日本人の若い男女は“ガイドブックを読むのに夢中で、銃撃戦の続く街の異常な様子には、全く気づかなかった”のだという.また“6カ月前から旅行中で,その間テレビや新聞のニュースは知らなかった”ということだ.現地の自然や人々と触れ合って,実際に自分の肌で感じ考えてこその旅行だろうに.現地にいるにも関わらず,依然としてガイドブックの世界から抜けられないとは,いったいなんの為に旅行してんの?っていいたくなる.争乱状態にあることにすら気づかないなんて,末期的症状という他はない.

農産物や家畜の生産現場を知らずに育つ子供がいたり,IT化でバーチャルな世界の広がりが加速したりしている昨今である.自分の閉じた空間意識のままでもなんとか世界をまわれてしまう世の中になったんだなあと思う.世界を見聞旅行している人たちは,閉じた環境で暮らす日本人よりもましな体験ができる人たちと思って,うらやましくも頼もしくも思っていたが,それもこのニュースを見るまでの話.今後は考えを改めることにした.見るべき目を持っていない人は,何をしても無駄なんだなあって.

4月19日(金)

アフガンで死亡したカナダ兵を悼んで半旗が掲かる.彼らを殺したのは米国.

昨日,バンクーバーにあるSimon Fraser大からJerome Lesemannという院生がやってきた.彼の指導教官はTracy A. Brennand助教授で,Shaw教授も副指導教官となっている.4月末からでかける野外調査に同行する.

Mark Kachmarという院生が越後湯沢周辺のGIS解析をしており,日本人ということでいろいろ相談相手になっている.今日は実際にArcViewでランドサット画像・国土地理院の画像地図と数値地図の3つをフィットさせる作業につきあう.日本は特殊な座標系を使っているので国際標準に変換するが大変.そのためのソフトのほとんどが日本語版で英語のシステム上では文字化けして読めず,手探りで作業をするはめになった.

夜,見事なオーロラが出た.半月がちょっと明るすぎて邪魔だったが,淡い白緑色のカーテンが,ほぼ全天で舞う.こちらに来て,これだけはっきりしたものを見るのは初めて.いつも北ばかり注目していたので,真上に出たのは意表をつかれた.写真に撮れないのが残念.そのときのAurora Cammaj.comのデータは以下.

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丁度今ごろは,日没直後に惑星が西の空にそろっているのが見られるそうだ.ここは日没が20時頃だけど,惑星は太陽の方向との角度の問題なんだから,日没時間が遅いからって見れないことはないんだよなあ...確認

4月20日(土)

すがすがしい好天.夏物を持ってきていなかったので調達しに買い物にでかける.実際の気温は10度ぐらいだが,日中はTシャツで十分.気温の変化が激しいので体がなかなかついていかない.

昨夜のオーロラは北海道でも観測されたらしい.

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北海道新聞4/21日より

4月21日(日)

午前中は掃除と洗濯.午後,Jerome君とMartinと一緒にShaw教授宅に夕食におよばれ.

夕食後のおしゃべりで,アフガンで死亡したカナダ兵士のこと,エドモントンの学校の先生のストライキのこと,政治家の腐敗などが話題になり,テロに対する日本の立場や,日本の教育問題,日本の政治家のことなどを説明するハメに.つたない英語でどこまで説明できたか分からないが,いろいろと考えさせられる一夜であった.

金曜日の夜に見事なオーロラを見たといったら,今夜もでるかな,と言って,わざわざ郊外の街の明かりのないところまで連れて行ってくれた.残念ながらオーロラは不発だったが,暗闇の中できれいな星空を久しぶりに眺めることができた.

4月22日(月)

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今日22日は「地球の日

med_pugetmap.jpgShaw教授がちょっと来い,というので行ってみたら,作業台の上にきれいな大判のポスターが広げてあった.ポスターには,みごとなドラムリンが表現されており,Jerome・Martinと一緒に4人でしばらく見とれてしまった.

これは,ワシントン州西部のPuget Soundという地域の10mメッシュのDEM画像.ワシントン大のチームが,いろんなDEMソースを統合して作成したもので,Webで入手できる.この地域は,コルディレラ氷床の最拡大域の南端にあたる.

DEMは,植生や人口物などの不要な情報を含まず,純粋な標高データだけからなるので,ドラムリン研究にとっては非常に都合が良い.もちろん解像度が上がれば上がるほど嬉しい.われわれも,現在,BC州のDEM画像超特大MAPを作成中.仕上がりが楽しみ.

4月23日(火)

小雪がつらつき風もある.

Shaw教授に原稿のチェックを頼んであるので,進行具合を聞きに部屋へ行ったら,期末試験の答案が段ボール箱一杯に積み上げられているのを見せられた.教授は,すまなそうに,ちょっと待ってくれ,という返事.あれだけのものを採点するのはホントにたいへんだ.ということですごすごと退散.教授は学生への対応が丁寧な人だけに,採点もきっちり見るんだろうな.

日本では,無責任で人を煽るだけしか能のないバラエティ番組が,「アポロは月に行ってない」なんていうのを大きく取り上げたので,巷でも話題になっていると聞く.よく調べたら,これ,アメリカが作った番組を使っていたようで,震源はアメリカにあるということが分かった.

こういう番組は実際に打ち上げたアメリカだから許される,というか,十分反論できる人材があることを前提にしているからこそ安心して(?)いろんなことを言い出せるのではないかと思う.日本での反響の実態がわからないのでなんとも言えないが,先進国の中で一般市民の科学リテラシーが最下位と言われる(2/19)日本人は,こういうのにはイチコロなのではないかと想像する.

救いは,NASDAと国立天文台が主催する月探査情報ステーションがこの疑問に明解に答えていること.一方,例の番組は打ち切りになったとか.

実は我々も水流地形に関して火星の成果には期待をかけているだけに,“NASAの惑星探査はウソでした”なんてことになると困ってしまうんだよね.でも,自分でデータを取るわけにはいかないから,信頼せざるをえないところが辛い.火星有人探査の隊員の募集が有ったら応募してみようかな.そういえば,無職時代に苦し紛れにスペースシャトル飛行士の選考に応募して,はずかしながらあっさり落とされたことがあったのを思い出してしまった.あの時の候補者身分証みたいのは,記念に今でも大事に取ってある.

実はうちのかみさんは毛利さんの大ファン.私も火星飛行士になれば,夫の株があがるかな?毛利さんが2000年2月のミッションで実施したのは,地球のDEMをつくる仕事.白岩さんたちと一緒に,その観測域にリクエストを出して通らなかったということもあったなあ...でもあの成果は,たぶん我々の氷河地形研究にも大いに役立つはず.

4月24日(水)
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このロゴ
は傑作!

今日は地球大気科学科の院生の発表会.といっても,修論やD論の公開発表会とは違って,学生組織が独自にオーガナイズするシンポジウムで,自由登録制.氷河・自然保護・海洋・GIS・岩石地質など,内容の雑多さ加減は札幌の某講座といい勝負.私は,氷河と第四紀に関係する4件の発表だけ聞く.レベルとしてはM1の中間報告程度かな.

院生の発表の後,基調講演として招かれたカルガリー大のAlan Hildbland助教授の“The Near-Earth Space Surveillance Mission”という講演を聴く.


2/8に,“Holocene [完新世]”に続けて新たに“Anthropocene[人類世]”という地質時代を設けることが提案されていることを書いた.ところが今度は,“完新世”が属する“Quaternary[第四紀]”そのものを“Neogene[新第三紀]”に含めてしまおう,という提案がなされていることを知った.

地形学辞典には,新第三紀の二番目の定義として「中新世から第四紀までを含むとする区分も使用されている」と書いてある.どうやら,第四紀と新第三紀との軋轢は昔からあったようだ.

Era.gif地質時代区分の世界標準は,国際地質科学連合(IUGS)内に設置されたInternational Commissions on Stratigraphy (ICS)という委員会で決められている.この下部組織に新第三紀の層序を検討するSubcommission on Neogene Stratigraphy (SNS)というのがある.一方,第四紀の層序を検討する委員会はICSの下部組織にはなく,これまで,国際第四紀研究連合(INQUA)内に独自にSubcommission on Quaternary Stratigraphy (SQS)という委員会が設けられていた.そんな中,2001年の8月に,SQSがSNSと合併してICSの下部組織となることが決まったのである.これに伴い,SQS+SNSという新しい委員会の名称を“新第三紀”で統一しようという話が出たことが“第四紀消滅”の噂の発端らしい.

要するに,“Miocene[中新世]”と“Pliocene[鮮新世]”を擁する“Neogene[新第三紀]”軍団が,地質学の中では新参者の“Quaternary[第四紀]”陣営から“Pleistocene[更新世]”と“Holocene[完新世]”を奪おうとしている,という構図.もしそうなれば“Quaternary[第四紀]”という名を冠する分野は,今後大きな変更を迫られる可能性がある.ということで,学術的に何が問題になっているのかはよく分からないのだが,今回の件は多分に政治的な匂いがすることだけは分かる(上の図を書いていても,右のコラムが地質事象でないのは自分でも笑えた).

「“第四紀”には,まだ“新第三紀軍団”が気づいていない“人類世”という秘蔵っ子が残されているよ」,なんてのんきな事を言ったら怒られるかな.

4月25日(木)

試験が終わって学内は閑散としている.

このところ,目覚ましコーヒーの効果が薄いなあ,と思っていたが,コーヒーのラベルをよく見たら“Decaffainate”と書いてあった.失敗した...体は正直だ.

4月26日(金)

明日から,待望の野外調査に出かける.半年の冬を耐えてようやく時機到来といったところ.前半はShaw教授,ミラン氏,マーティン氏,ジュローム氏らと共にBC州南部のドラムリンフィールドで,コルディレラ氷床の氷底水流の出口からスキャブランドにかけての調査.後半は単身東に向かって五大湖周辺のローレンタイド氷床の末端部の地形を見聞.帰着は5月10日.

ということで,滞在記の更新はしばらくお休み.

この滞在記でもおなじみの金川教授が,NHK富山放送局のローカル番組にレギュラー出演することになったらしい.

4月27日
(土)

〜  
4月30日(火)

野外調査.

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