Takanobu Sawagaki沢柿教伸

Takanobu Sawagaki

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flag.gif エドモントン滞在記
2002.2.1〜2.15
2月1日
(金)






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「ダボス会議がニューヨークで開催」というニュースの見出しをみて,またまた「ん?」と思ってしまう.なんでスイスのダボスがニューヨークに? その正解はこちら.正式名称が「世界経済フォーラム」であるこの会議は,そもそも「スキーを楽しみつつ気楽に一同に会しグローバルな見地から意見を交換」するものだったとは,知らなかった.

世界会議といえばINQUAの氷河作用委員会が行っている「ドラムリンシポジウム」も昨年で6回を数えた.今朝のShaw教授とのお茶話で聞いた限りでは,シンポジウムでのデフォーメーション派と水流派とは,対立しているというよりも乖離していると言った方がよいそうで,第三者による外交的な仲介がないと先に進まないのではないかと言っていた.「オリエンタルなサワガキなら可能だと思うけど...」と水を向けられたが,世界的に認知度の低い自分はその分にあらず,と否定した.

昨年の10月には,デンマークで同じ氷河作用委員会による「Palaeo-Ice Stream International Symposium」も開催された.今後の南極観測のプランともからんでいるので是非出席したかったが,話す内容もないし時期的に難しかったので断念した.世の中の流れは我々の目論見とそうかけ離れていないことだけは確かである.

2月2日
(土)


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小春日和.風が心地好い.洗濯している時間にランドリーの裏にあるリンクでスケートの練習.

午後,テレビ朝日のザ・スクープの動画配信版を見る.外相の更迭劇について外相と事務次官側の詳細を取材したもの.ディテールは確かに大切だしドラマとして見ていると面白いが,政治でいちいちそれを言い出したら本質を見失うような気がする.国会とはどのレベルで動いているものなのかということがよく分かった.

国民が激怒したことで一番喜んでいるのは抵抗勢力であることだけは確か.

2月3日
(日)

曇り.暖かい.日中は多分プラスの気温.買い物に出かけた帰りに,まだ行ってない南西部に行ってみようとふと思いたつ.

実は家から歩いて15分ほどのとろこにはSnowvalleyというスキー場がある.その周辺まで行こうと思って自宅前よりもほんのいくつか先の停留所でバスを降りるつもりだったのが,バスがハイウェーに入ってしまったため5-6 km先でようやく降りられた.あとで地図で調べたらOgilvie Ridgeという住宅街だった.

snowvalley-s.jpg 平坦面上からみたSnowvalleyスキー場.下の森林帯を散策道が通っている.左はハイウェー.

住宅街を抜けてWhitemud Creekと呼ばれる谷沿いの自然散策歩道に入る.この散策道はタンネとシラカバの森のなかを通っていて,雪はあるものの締まっているので歩きやすい.川は凍っているので上も歩けそう.冬だというのにリスがあちこちからちょろちょろと出てくる.掲示によれば鹿もいるらしい.まるで大雪か十勝連峰の麓の森林帯を歩いているような感じで,気持ち良い.

最終的にはSnowvalleyスキー場に出る.せっかくなので,レンタルスキーを借りて,買い物した食料を背負って滑る.でもあまりにも斜面が短いしボーダーばかりでうっとうしいので3回だけでおしまいにして帰宅.ほぼ2時間の散歩となった.

エドモントンは平原にあるのは確かだが,市を二分する巨大な河川であるNorth Saskachewan Riverの下刻量は半端ではなく,50ー100mぐらいの深い谷になっている.そこへ流れ込む小さな谷もいくつかあり,Whitemud Creekもその一つで,平坦面からの深さは30ー50mぐらいある.エドモントンは,こうした河川沿いの低地を緑のリボンと称して保護地域に指定し,レクリエーションの公園や散策道を整備している.

自宅からこんなに近いところにこんなによい散策路があることを発見し,思わぬ収穫となった.こういうのを専門用語で“セレンディピティ”という.

2月4日
(月)


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今日もセレンディピティについて.

昨夜テレビでディズニー映画のポカホンタスをやっていた.英語で見ると,アニメの口の動きが台詞や歌と良く合っているのに感心する.吹き替え版だとディズニーアニメのこの細かさにはたぶん気づかないだろう.

ポカホンタスに興味が出てきたのでネット検索をかけていろいろ調べてみたら,その史実とネイティブアメリカンについて,非常に面白い検索結果をたくさん得ることができた.しかし残念ながら今日の話題はそのことについてではない.偶然ではあるが,以前に書いたコーヒーについての新事実を発見したのである.

1月23日に「こちらには日本ではカリタさん・メリタさんで有名なコーヒードリッパーがない」と書いたが,ピストン式の“メリオール”という道具は売っている.エドモントンのわが家にもあって,日本茶を入れる急須がわりに使っている.実はこれ,てっきり紅茶を入れるのに使うものとばかり思っていたが,本来はエスプレッソ用コーヒーをいれるフランス起源の道具だということが判明した.そういえば,Shaw教授宅でもこれでコーヒーを入れていたのを思い出した.クレーマークレーマーの朝食を作る有名なシーンにも出てくる.今まで,あのシーンらしく,お茶を入れるものでコーヒーを入れようとしている,という笑いをとる演出とばかり思っていた.

実際にコーヒーを入れてみたが,どうもおいしくない.いやはっきりいってマズイ.そこで正しい入れ方を探るべく,またまたネットで検索.ところが,紅茶派からは「リーフが広がらないのでメリオールは邪道」,コーヒー派からも「豆が出てきて,まずくて飲めない」という評価ばかりがヒットする.きっと正しい入れ方があるはずだから,もう少し探ってみよう.

で,ポカホンタスとメリオールのつながりは,というと,このページの中の「英国見聞録」にある.最初は241の記事に行き当たったのだが,これがものすごく面白いのでついついハマってしまい,288を発見したという次第.著者はこの「ティーサーバーの正式名称を知らない」ということなので,“メリオール”だと教えてあげようかな.

2月5日
(火)








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やけにエリザベス女王がテレビに出てくると思ったら,明日6日が即位記念日で50周年だそうだ.一応女王がカナダの国家元首ということになっているから関心が高いのだろう.昭和は64年だったから,女王の統治もいい年になっている.ベティ(ベス・リズ・リサ・エライザ)50年,なんて言い方があると面白いのに.日本には即位記念日というのはないが,天皇即位日を調べてみたら昭和は12月25日,平成は1月8日であった.ということは,昭和というのは,元年も最後の年も一週間づつしかなかったということになる.

Shaw教授の講義で水流説を支持する研究のレビューを聴く.水流派の研究者が最近投稿した論文が立て続けにリジェクトされているということで,教授はかなり嘆いていた.レフェリーは,実際のフィールドにある事実を知らず,理論的なことと氷河地質学内の進展に関する知識のみでリジェクトの判断をしているという.これでは証拠を提示する機会さえ妨げられている状態ではないか.

教授の部屋にある修論やD論を読んでいると,デフォーメーションで説明できない現象をカナダのかなりの範囲で記載していることが分かる.たとえそれらがジャーナルには載らなくとも,水流派は着実に現地の観察を積み重ねている.一方のデフォーメーション派は,少ない観察と多くの理論で地位を確立したが,現在のところは,その考えだけで突っ走ってしまっているようにも私には見えるのである.

“なにか良いサゼスチョンはないか”と問われて“日本人がヒマラヤでやってきたようなインベントリー作りをしっかりやって,それぞれの仮説で説明できることとできないことを,しっかりまとめていくのが良いのではないか”と進言しておいた.

2月6日
(水)

寮の家賃が値上げされるらしい.学生全体の15%の住居を確保する目標に対して,学生の増加で住居が不足してきたために増築が必要なこと,現在の建物も老朽化して修理や改築が必要なこと,などがその理由である.しかし,未来への投資を現在の住人に値上げという形で負担させるというやり方にはどうも納得できない.新しい建物の恩恵を被るのはそこに入居する学生であって,現在の住人ではない.むしろ現在の住人は,日に日に老朽化していく設備を我慢して使っているのだから,年ごとに安くしてもらわないと割に合わないくらいだ.新築・改築がどうしても必要だというなら,借金でもして施工し,受益者負担の原則で賄っていくのが筋ではないか.

ここ数日,アルバータ州では学校の先生のストライキが続いているし,寮の住人による運営委員会がなにも仕事をしないという批判をあびて解散することになったという知らせもくるし,世知辛いことばかり...

2月7日
(木)






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壊れたパソコンを修理しようとして,なかなか部品が調達できなかったり,修理代が異常に高額だったりすることがままある.そんなときには,ネットオークションに出品されているジャンク品が役にたつ場合もある.私もそうした所で入手した部品で安価に何台かのマシンを復活させた経験がある.ネットオークションは結構使える.

そんなこともあって「実録ヤフーオークション事件顛末記」というサイトには早くから注目し,密かに応援してきた.著者の大西氏は,盗まれた自分のPowerBookをネットオークション上で発見したという経験を元に,半ば命懸けで経緯をネット上に公表し,ネットオークションにまつわる犯罪者と組織・被害者とその支援者・競売業者や警察の対応などの実情を明らかにしており,その連載はまだ続いている.

テレビ朝日の「ザ・スクープ」でも昨年12月22日放送分で盗品闇ルートの問題が取り上げられている.動画配信版がネットで見られるので,上の顛末記を読んだ後にそれらをご覧になると,下手なホラー映画以上の迫力と恐怖を感じることができるだろう.

なによりも,犯罪が身近に存在しているというのに,警察がまともに対応してくれない,ということが一番怖い.自分の身は自分で守る時代になった.今後は,犯罪から身を守る方法について,交通安全教習なみに義務教育していかないとだめかもしれない.

大西氏とその支援者の努力が実ったのか,警察庁がようやく,インターネットでの盗品売買に歯止めをかけるために競売業者を都道府県公安委員会への届け出制とする古物営業法の改正案をまとめたらしい.今の国会で成立するとよいが,顛末記で勉強した限りでは,一番肝心なのは被害者からの訴えに業者や警察が責任を持って対応することを義務づけることだろうと思う.でも,たぶんそういうことは法案には盛り込まれていないだろうなあ.

隣には,NHKが南極・昭和基地に仮設放送局を作るという記事がある.来年のテレビ放送開始50年にあわせて,とのこと.

2月8日
(金)


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午後,定例の講演会でAlexander P. Wolfe氏(11月17日に登場)による“Stratigraphic Changes associated with the Holocene-Anthropocene boundary: evedence from remote lake ecosystems”を聴く.

産業革命以降,人類の活動が様々な地球規模の自然現象に影響を及ぼすようになった.“Holocene [完新世]”に続けて新たに“Anthropocene”という地質時代を設けることもCrutzenStoermerによって提案されている(pdf_icon.gifIGBP Newsletter, 41, 17-18, May 2000; Nature 2002, 415, 23) .多分この言葉はこれからはやると思うので,覚えておいて損はないだろう.

そのHolocene-Anthropocene boundaryで何が起きているのかを古湖沼学・層位学的見地から検証しようというのが講演会の内容.分析内容は一般的なセディメントコアと変わらないが,高分解能であることおよび自然と人為の影響を分離することを特徴としており,特に,人為的なものが自然シグナルを増幅しているのか打ち消しているのかを見極める分析をしている.また,LIA以降の長期トレンドに引っ張られている部分をどう取り除くか,という問題もあるらしいが,眠くなってきたのでこのへんはよく聞いていなかった.

こちらで講演を聴いていていつも感じることは“誰がいつ言い始めたことなのか”ということを,どの演者もしっかりと押さえていることである.こうした先駆者への敬意の表し方には見習うべきものがあるし,原典への情報も得ることができるので,後々,自分で物事を系統的に調べる助けとなる.

“誰が言った言わない”でもめているように,なにもかもうやむやにしてしまう某国の土壌では,科学への正しい姿勢も育つはずがない...とつくづく悲しくなった.責任は大学教官にだけあるわけではない.

“Anthropocene”をGoogleで検索すると,ドイツのサイトが目白押しでひっかかる.提唱者のCrutzenがドイツにいるから当然と言えば当然だが,かつてドイツ人が“ Alluvium [沖積世]”という名称を提案したものの,今では全く使われなくなったことへのリベンジであるかのようで興味深い.

“Anthropocene”を直訳すれば“人類”とでもなるか.しかし,第四や完新もすでに俗称として“人類の時代 ”と呼ばれているし,果たしてと呼べるだけこの期間が続くかどうかも怪しく,もしかしたらで終わるかもしれないので,この名称もいずれ見直される時が来るような気がする.もっともありそうなのは,後人類によって,大量のススを含む堆積物と大量絶滅のペアで汎世界的に記載され,放射能イベントとそれに先行する温暖化イベントとして片づけられてしまうかもしれないことだ.私としては“Industrial Event”ぐらいにしとけばいいのに,と考えている.
(参考までに,ロシアでは第四のことを“Anthropogene [人類]”と呼んでおり,また,大阪市立大には“人類自然学研究室”というのがあって,日本では名古屋以西で人気があるようだ).

大事なことは,地質学的見地でこの時代を見つめる目を持つことだろう.科学誌Geology (2000)に“Earth moved by humans”という論文があるらしく,Wolfe氏は講演の冒頭で,その論文から“人類が移動させた土砂量の時間変化”を示したグラフを紹介していた.地質学の世界に身をおいてきた研究者は,その瞬間,地質屋頭の枠組みにごく最近の事象がカチッとはめ込まれる発想的転換を体験する.こういうのが,専門バカといわれる研究者にとってはたまらなくエキサイティングな瞬間であり,“Anthropocene”の提案の趣旨もそこにあると言って良いだろう.

2月9日
(土)


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マーガレット王女の逝去を悼んで半旗があがっている.

昨夜は冬期オリンピックの開会式の生中継.こちらは金曜の夜のゴールデンアワーだったのですごい高視聴率だったそうだ.

ブッシュ大統領が登場したのを見て「ああ,アメリカなんだなあ」とへんなところに感心する.入場行進時のアメリカの衣装は,なんだかケビン・コスナーの映画「ポストマン」の制服みたい.Rootsのマークがしっかりと入っていたが,カナダだけじゃなくてUSAチームの行進服も提供していたとは.前回の長野ではベレー帽が流行して結構売れたとか.アメリカバージョンも流行るのかなあ.

ユニフォームで思い出したが,アフガンに派遣されているカナダ軍の迷彩服は森林仕様になっていて緑色のため,砂漠では目立ってしようがない,とニュースが伝えていた.現地では各自で色を塗りなおしているらしい.兵士にとっちゃ命懸けだものなあ.そのアフガンでは,国民の多くが冬期五輪の開催を知らないでいるとか.

久しぶりにキムチを食べた.体はこれを求めていたって感じ.

2月10日
(日)


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暖かく,鳥のさえずりが心地好い.このまま春になるのかなあ.

午前中は洗濯とスケート.午後は五輪の中継を見ながら論文に手を入れる.女子3000mスピードスケートでカナダもようやく銅メダルを1個獲得.

五輪は巨大プロジェクであるだけに,様々な所に影響を及ぼす.運営支援システムもその一つ.これまで,多くの五輪大会の運営システムは,巨人IBMによって提供されてきたが,今回はそのIBMの参加なしで行われる初めての大会らしい.全部で13社のスポンサーが,PC/サーバ,その他の技術をサポートするという.

最高の技術と金をかければここまでできる,というデモみたいなもんだが,こんな巨大プロジェクトとは無縁な私としては,手近なもので安価に構築できる管理システムのほうが興味がある.今回の技術やノウハウが庶民のレベルまで降りてくることを期待したい.それにしても,今回大量に投入されているPCなどの機材は終了後にどうなるんだろうねえ.

2月11日
(月)


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朝,数センチのベタ雪.なぜか一日中眠くてしようがない.こちらでは,今月16日から9日間“Reading Week”という学生対象の休暇がはじまる.Shaw教授は“Skiing Week”だと言っていた.休暇前に中間テストのようなものがあるらしく,学内は学生で混雑している.

夜,フィギュア・ペア・フリーの生中継.カナダは1960年に金を取って以来42年間ずっとロシアに金を取られ続けてきた因縁の種目.昼にスピード500m1回目でWotherspoonがおおこけしたことで,本人はもちろんカナダ国民はだいぶ落ち込んでいたこともあって,Sale & Pelletierのペアに金奪還の一層の期待がかかる.

3t2002021205figua.jpg昨夜はショートプログラムの最後の数秒でコテッとなって笑いを誘っていた二人だが,ショートプログラム終了時点でロシアのBerezhnaya & Sikharulidzeに続いて2位につけていた.直前にロシアが非常によい演技をしたのでどうなるかと思ったが,やはり抜くことはできなかった.どうみてもカナダの演技が完璧だっただけに,銀という採点への会場のブーイングは理解できる.たぶんこの一件はあとを引くだろう.一方,長野の銀に続いて今回金をとったBerezhnayaは,練習中の事故で言語障害になったという悲劇からの復帰も経験しているだけに,表彰台での表情はなかなか印象的だった.

次は大御所Elvis Stojkoに期待.

2月12日
(火)


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日本ではD論の公開審査が終了.まるで自分の二本目のD論が終わったような気分.Shaw教授の講義も今回でおしまい.次回からはRains教授の氷河地形学.

sale_pelletier.jpg昨夜のフィギュア・ペアのジ判定の件だが,CBCが興味深い分析をしていた.Berezhnaya & Sikharulidzeに票を投じたのはロシア・ウクライナ・中国・ポーランドの東側四カ国とフランス,一方Sale & Pelletierに投じたのはカナダ・アメリカ・日本・ドイツの西側四カ国で,勝敗はフランスがロシアに投じた一票で決まったのだという.これは,審判員の間に東西ブロックが存在していることを明確に示しており,その駆け引きの中で,フランスが今後の競技で自国に有利になるよう,最有力ジャッジの機嫌を取るために東側についた,ということらしい.

身長に応じたスキーの長さにする制限があるなど,ルール自体が欧米人に有利になるように改訂されたジャンプ競技の例もあるし,健全なスポーツといってもなかなか一筋縄ではいかないものだ.

学問の世界など,もちろん健全であるはずはなく,この手の話題には事欠かない.こちらに来て,より一層世の中のいろんな面が見えてきたような気がする.

2月13日
(水)




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異常な暖かさが続いていて,どんどん土草が出てきている.昼の時間も目に見えて長くなっているのが分かる.近ごろたまらなく眠いのもこの陽気のせいか?ホントにこのまま春になるとしたら,なんともあっけない冬だった.

フィギュア・ペアの判定の一件はこちらではいまだにトップニュース扱い.スケートのElvis Stojkoが,7位と振るわなかったショートプログラム後に引退を表明し話題になっている.もういい年でもあるし,プロもこちらでは結構人気のある商売なので,まだまだ彼の滑りは楽しめる.

最近刷新された白岩さんのページを読んでいて,「気候の歴史」「一万年の旅路−ネイティブ・アメリカンの口承史」「歴史を変えた気候大変動」の紹介があった.最近出た最後の本を除いていずれもすでに読んでいた本だが,ふと思いついて,エドモントンの我が家にある数少ない日本語の書物の中から,来加の際に機中で読んできた「環境考古学のすすめ」(安田喜憲著,丸善ライブラリー)を取り出して読み直してみた.「環境考古学」の提唱者を自称される安田氏だが,その分野の重要性の宣伝という大目的の他に,この本の要点は「森の民」としての日本人の特異性と優位性を示すことに有ることを再認識する.

そうこうしているうちに新たにいろんな事がカチカチと頭のなかで結びついた.詳細については暇なときにあらためて文章にまとめてみようと思うが,要点だけ書いておくと,「四つの風」「ネイティブアメリカン」「カナダ軍の森林仕様の迷彩服」「Anthropocene」等々,この滞在記の話題の傾向が「第四紀の環境変動と人類」に集約されるのではないかと自己分析するに至ったことだ.

たとえば「環境考古学のすすめ」を読むに付け,「Anthropocene」という命名は的を得ていないと確信するようになったのもその一つ.また,まだネイティブカナディアンの人々との交流を経験していないのが残念だが,メトロポリタンなエドモントンの生活の中で西欧的・華僑(中国)的文化というか雰囲気というか,そういうものにいろいろと触れる機会も多かったこと,さらには,私の寺での生い立ちについてShaw教授がけっこう興味深くいろいろ聞いてくるために,ずいぶん仏教的・日本のアニミズム的文化について説明を迫られる機会も多かったことなど,なんだか自分が安田化してきているような気がしてきた.問題は“氷河からどこまで人類を語れるか”ということ.

トーマス・クーンの「科学革命の構造」については,まだ自分の中でも完結していないのでおいおい考察していきたい項目なのであるが,それはまた別の話.ただそういう科学哲学については,こちらでお茶の時間にポパーやクーンを話題にだすと,「おっ」という感じで一目置かれるみたいなところがあって面白い.

中山茂氏の邦訳は誤訳が多く,クーンの主張を正確につかむための学術的な使用に堪えないのでお勧めできない”らしいので,原著にあたるかほかの解説を参考にすることをお勧めする.

2月14日
(木)








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昨夜,M2の発表が終わったと聞いたものの,審査が通ったかどうかまでは確認していないので,やや不安.

今日はバレンタインデー.学内では,リボンのついたプレゼントや花束等を販売するコーナーができたりして,贈り物を抱えたナンニョも目に付く.男も女も想いの人とプレゼントを交換しており,朝のお茶の前には,Shaw教授もしっかり奥方にプレゼントを手渡しに出かけていたchoco_heart.gif.Shaw夫人はUAのビジネススクールで臨時講師をしていて,我々のいる所とアトリウムでつながっている隣のビルにいるので,ちょっとそこまで,という感じで行き来できるのだ.

フィギュア・ペアの判定の一件は,問題のフランスの審判がソルトレイク京から逃げ出す事態にまで発展.

Shaw教授から,Rains教授に交代する前に話をしてほしいと依頼され,今日の講義では私の南極に関する一大野望を披露.海氷に穴を開けて一点一点計っていく測深の苦労話が一番受けた.帰国当時はドリルを2本も落とした失敗ばかりがとりだたされて肩身の狭い思いをしたが,あれから10年近くたった今,ようやく越冬で最も辛かった仕事が報われたという感じ.

夜,Canadian Learning TelevisionでやっていたBBC-Horizonの“Antarctica The Ice Melts”(The Ice LivesThe Ice Formsに続く南極3回シリーズの最終回)を観る.まさに我々もこれから白瀬流域でやろうとしている内容でもあるし,C. Raymond氏をはじめ,90年代後半に西南極で成果を挙げている有名な研究者が現場や研究室で働いている様子がたくさん出てきて非常に面白かった.この番組はちょうどそういう成果が出そろった98年制作のものである.なんか皆さん絵になっててかっこいいんだよなあ.また,すでに投入されている圧倒的な観測機材を見せつけられて,はたして追いつけるだろうかと悲観的にもなる.唯一の救いは,まだ西南極氷床しか注目されていないことか.

“十分冷えている南極では多少の気温上昇で氷が解けることはさほど心配する必要はない,むしろアイスストリームから流れ出る量や崩壊のほうを心配しなきゃいけない”というMacAyeal氏の言葉には大きくうなづく.こうした番組の中での発言は“The Ice Melts”のホームページにある“Programme Transcript”に記録されており,重要な発言も多くて読みごたえがある.こんな番組を一般向けに作っているBBCはすごい!

2月15日
(金)


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なんと日中は10度近くまで気温が上昇.土の香りが風にだたよう.

フィギュア・ペアの判定の一件は,Sale & Pelletierのペアにも金ということで決着した模様.疑惑のフランス審判を資格停止にして採点を無効にしたら4対4の同点になった,というのが双方に金の理由らしい.どこかの国の「三方一両損」よりはよっぽどよくできた理屈ではある.しかし,フランスはある意味では正直損したのであって,審判員の間にある東西問題が解決したわけではない.スケープ・ゴートにされたんだろうな,きっと.

夜はShaw教授に誘われて観劇に行く予定だったが,劇場が満席のため教授宅でオリンピックをTV観戦.

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